CDN(Content Delivery Network)は、Webのコンテンツを効率良く配送するために開発されたネットワークであり、導入することでレスポンスの高速化やWebサーバーの負荷削減といったメリットがあります。レスポンスの高速化は、ユーザー体験を良くすることができるため、ユーザーのサイト離脱率やコンバージョン率の改善というビジネス上のメリットがあります。
さらに、レスポンスの高速化は、SEO対策にもなるため、GoogleやYahooで上位表示される可能性が高まり、ビジネス上の優位性となります。
CDNの効果は、配信するコンテンツの数やサイズが大きくなりやすいECサイトやメディアサイトで特に大きくなるため、これらの業種では多くの企業でCDNが導入されています。
CDNの導入はWebサイト運営者にとって多数のメリットがありますが、導入前に気をつけておくべきことがいくつかあります。 CDNの設定を適切に行わないと「他人のマイページが見えてしまう」といったセキュリティ事故や「一部のユーザーがWebサイトに接続できなくなる」といったトラブルも発生してしまいます。
本記事は、ビジネス職の方向けにCDN導入のメリットと導入時の注意点を解説します。
CDNとは?
CDN(Content Delivery Network)は、Webのコンテンツを効率良く配送するために開発されたネットワークです。 1988年にマサチューセッツ工科大学の研究者によって設立されたAkamai Technologiesによって、インターネットのコンテンツ配信を高速化し、信頼性を向上させるための技術として開発されました。
その基本コンセプトは、Webのコンテンツを毎回Webサーバーから配信する代わりに、地理的に分散して配置されたエッジサーバーからコンテンツのコピーを配信するというものです。ユーザーの近くからコンテンツの配送するため、レスポンスを高速化することができます。
コンテンツのコピーはキャッシュ(Cache)と呼ばれます。
上の図の青色で表されたコンテンツは最初はWebサーバーにしかありません。しかし、一度CDNがそのコンテンツを転送した後は、CDNはそのコンテンツをコピーして保存します。そして、その後に他のユーザーが同じコンテンツを要求してきた場合、Webサーバーの代わりにCDNがコンテンツを返します。
CDNは、世界中に分散して配置されているため、地理的にユーザーの近くにあります。そのため、CDNからコンテンツを配送することでユーザーは素早くWebページを見ることができます。
CDNを導入するビジネス上のメリット
CDNはコンテンツを効率良く配送できるため、CDNを自社サイトに導入することで多くのビジネス上のメリットを享受できます。
そのメリットは主に下記の4つです。
- ユーザー体験の向上(離脱率の改善)
- SEO対策になる
- Webサーバーの負荷とコスト削減
- セキュリティの向上
ユーザー体験の向上
前述したとおり、CDNはユーザの近くからコンテンツを配送することでレスポンスの高速化を行うことができます。これによって、ユーザー体験を良くすることができます。
3秒以上読み込みに時間がかかる場合、40%のユーザーがサイトから離脱することが調査で明らかになっています。自社のWebサイトの速度は、ITエンジニアだけでなく、経営者やマーケティング担当者も気にするべき事項になります。
特にEコマースやメディアサイトなどWeb上で直接収益が上がる業種は、Webサイトの速度改善は収益向上に直結します。
SEO対策になる
Googleは2018年のSpeed Updateによって、モバイルの検索ランキングにページの読み込み速度が影響を与えるようにしたと発表しています。レスポンスの高速化はユーザー体験の向上だけでなく、SEO対策にもなり、一石二鳥な取り組みとなりました。
以下は、CDNの効果を見るためにGoogleが提供しているページ速度の測定ツールでデモサイトの速度を測定した結果です。
CDNを導入することでスコアが60から96まで大幅に向上したことが分かります。
測定の仕方などは次の記事に記載しております。詳細を見たい方は、こちらをご覧ください。
Webサーバーの負荷とコスト削減
CDNがWebサーバーに代わりにコンテンツ配送をしてくれるため、Webサーバーの負荷を削減できます。
特に突発的なイベントでアクセスが急増した際にCDNが負荷の大部分を受け持ってくれるため、せっかくたくさんのユーザーが来てくれているのにWebサーバーがダウンしてしまった、レスポンスが遅くなり結局コンバージョンに繋がらなかったといった機会損失を防ぐことができます。
また、Webサーバーの負荷削減はそのままインフラ費用の削減に繋がります。 クラウドのサーバーを使っている場合は、サーバー台数を減らすことができますし、オンプレミスのサーバーの場合も過剰な設備投資を防ぐことができます。
セキュリティの向上
CDNはキャッシュを使って、コンテンツを効率良く配送するためのネットワークですが、WAF(Web Application Firewall)機能を追加してセキュリティを向上させることもできます。WAFは、Webサイトを攻撃から保護する役割を果たします。 CDNがWebサーバーよりもユーザーに近いところにあり、最初にリクエストを受け取るという性質を利用し、Webサーバーに届く前に攻撃を防ぎます。
CDNベンダーの選定
CDNサービスは、現在では多数のベンダーから提供されています。
基本的なキャッシュ機能やWAF機能はどのベンダーのサービスでも提供されているため、Webサーバーで使っているクラウドベンダーと合わせる、あるいはコスト比較をして決めるのが一般的です。
参考として、日本国内でのCDNのシェアを見てみます。
こちらはJ-Stream社が調査したJPドメインサイトのシェア比較です。
- 1位: Cloudflare
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Cloudflareは、無料プランが提供されていることが特徴です。小規模Webサイトで試してみたい場合はCloudflareを試してみると良いでしょう。
- 2位: CloudFront
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AWS(Amazon Web Service)が提供しているCDNサービスです。WebサーバーをAWS上で動かしている場合はCloudFrontを選ぶとデータ転送コストの削減ができ、メリットがあります。CloudFrontも月1TBの配信までの無料枠が存在するため、
- 3位: Akamai
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Akamaiは、CDNサービスを世界で初めて提供した企業です。 Akamaiは、法人の個別契約が必要になるため、一定のCDN利用の予定があれば問い合わせてみると良いでしょう。
弊社(BloomBlock)では、他のAWSサービスとの連携メリットがあるため、CloudFrontをお客さまのWebサイトに導入するサービスを行なっております。より詳細なご案内ができますので、お気軽にお問い合わせください。
CDN導入時に気を付けること
メリット多数のCDNですが、導入時に気をつけておかないといけないことが2つあります。
技術的な詳細は把握する必要はありませんが、CDNの利用には注意点があることを理解しておきましょう。
キャッシュしてはいけないコンテンツがある
キャッシュとはコンテンツのコピーのことでした。CDNはキャッシュを使用してWebサーバーへリクエストを転送することなく、ユーザーにコンテンツを配送します。 これは、Webサーバーに到達して欲しい情報やユーザーごとに違う情報を表示したい場合はキャッシュすべきでないということになります。
Webサーバーに到達して欲しい情報の例として、ECサイトでの注文があります。 注文処理をデータベースに書き込み、後続の処理をする必要があるため、注文情報はキャッシュされないようにする必要があります。
ユーザーごとに違う情報を表示する例としては、ECサイトでの購入履歴がありますがあります。購入履歴はユーザーごとに異なる情報を表示する必要があります。他の人の購入履歴が見えてしまうことはプライバシー上の問題があります。 ECサイトに限らず、ログイン機能があるサイトではキャッシュしてはいけないコンテンツがあり、キャッシュされないように細心の注意を払う必要があります。
フィーチャーフォンや古いスマートフォンからのアクセスができなくなる
フィーチャーフォン(いわゆるガラケーです)や古いスマートフォンは、TLS1.2やSNI(Server Name Indication)といったセキュリティ上必須となる機能に対応していないことが多く、CDNを導入すると通常は接続できなくなります。
技術的には、これらの端末が接続することを許可することも可能ではありますが、セキュリティ上推奨されなかったり、追加のコストが発生したりとネガティブな影響があります。
そのため、これらの端末からの接続が予想される場合は、非対応になることを告知するなど、ビジネス上の判断が必要になります。現在、多くのサイトでは、フィーチャーフォンや古いスマートフォンをサポートしない流れになっていますので、その流れに従う形になります。
CDNの料金
CDNにかかる料金は導入費用と毎月のサービス費用2つです。
特に運用費用は毎月継続的に発生するため、CDNの導入が投資対効果に合うかを判断する必要があります。
導入費用
CDNの導入は専門性が高く、経験のあるITエンジニアでなければ対応することが難しいです。そのため、導入コストは主に人件費になります。
BloomBlockでは、Amazon CloudFrontの顧客Webサイトへの導入代行を行っております。費用については、対象サイトの数やWAFを導入するかどうかに応じて変動するため、問い合わせお問い合わせフォームからお問い合わせください。ヒアリングの後、お見積りを提示いたします。
サービス費用
サービス費用は、毎月クラウドベンダーに支払う費用です。料金体系は、利用するCDNサービスによって変わります。
Amazon CloudFrontの場合は、データ転送量とリクエスト数によって主に費用が決まります。
CloudFrontでは、1TBのデータ転送量と1千万リクエストの無料枠が毎月付与されるため、動画配信を行わない小規模な利用の時は無料で利用できるケースも多いです。
ECサイトでCloudFrontを使用した場合の見積もりでは、月5ドル(約700円)と非常に低額で利用できます。
おわりに
本記事では、CDNの概要とメリット、気をつけることについて紹介しました。
CDNの導入することは、メリットが多数ありますので、Webサイトを運営していてまだ導入をしていない場合は検討することをおすすめ致します。