基礎から理解するWAF入門: 第2回 脆弱性とWAFの必要性について

現代のデジタル化された社会において、企業や組織のWebアプリケーションは、サービス提供の主要な手段となっていますが、これらのアプリケーションが直面するセキュリティの脅威は日増しに進化し、高度化しています。

そのため、Webアプリケーションファイアウォール(WAF)が、脆弱性に対する重要な防御手段として採用されています。この記事では、WAFの重要性を理解するために切っても切り離せない脆弱性について解説します。

目次

脆弱性とその被害

脆弱性とは

早速ですが、脆弱性とは何でしょうか。IPA独立行政法人では以下のように定義しています。

「脆弱性」とは「ソフトウェア等におけるセキュリティ上の弱点」のことで「セキュリティ
ホール」とも呼ばれます。

https://www.ipa.go.jp/security/guide/hjuojm0000007uwy-att/000051352.pdf


これによると、脆弱性(Vulnerability)とは、システムやソフトウェア、ネットワークなどの情報システムにおいて、セキュリティ上の欠陥や弱点が存在する状態と言えます。脆弱性はさまざまな形で現れ、例えば、プログラムのバグや脆弱なコード、不適切な設定、セキュリティポリシーの不備、既知の脆弱性を含む古いソフトウェアやライブラリの使用などが主な例として挙げられます。

脆弱性が悪用されると、機密情報が漏洩したり、システムのダウン、あるいは、不正なアクセスが行われたりする可能性もあります。そのため、脆弱性の発見と修正は、情報セキュリティの観点から非常に重要となり、定期的な脆弱性評価やペネトレーションテストなどはその助けとなります。

セキュリティ対策を怠った結果、脆弱性を悪用された場合、Webサイトを運営する組織には多大なる被害が発生し得ます。主要なものは以下となります。

脆弱性を悪用された時の被害

  • データ漏洩: 脆弱性を悪用する攻撃者が、システムやアプリケーションに侵入し、機密データや個人情報を盗み出すことがあります。例えば、SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティング(XSS)の脆弱性を悪用して、データベースから情報を抜き出すことがあります。
  • システムの制御権の奪取: 脆弱性を悪用する攻撃者が、システムやアプリケーションに侵入し、制御権を取得することがあります。これにより、システムの操作やデータの改ざん、サービスの停止などが可能になります。
  • サービスの停止: 脆弱性を悪用する攻撃者が、サービスやシステムに攻撃を行い、サービスの停止やサービスの利用を妨害することがあります。例えば、DDoS(分散型サービス妨害)攻撃は、多数のコンピュータからのトラフィックを使用して、サービスを過負荷にさせることでサービスを停止させることができます。
  • 不正なアクセス: 脆弱性を悪用する攻撃者が、システムやアプリケーションに不正なアクセスを行うことがあります。これにより、管理者の意図しない不正な操作や権限の濫用が行われる可能性があります。
  • 組織への被害: 脆弱性を悪用する攻撃が成功した場合、組織や個人には様々な被害が生じる可能性があります。これには、経済的損失、信頼の喪失、法的問題などが含まれる可能性もあります。

こういった被害から自社を守るために、セキュリティの強化は必須と言えます。脆弱性対策を行うことで、攻撃からシステムを保護します。脆弱性が悪用された結果、不正アクセスによりシステム停止に繋がる恐れもあります。

また、多くの業界では、セキュリティに関する法的規制があります。これらの規制に遵守し、法的リスクを軽減することも大切です。セキュリティ侵害は企業や組織の信頼を失墜させます。顧客や利用者の信頼を維持し、企業のレピュテーションを守るためにも、セキュリティ対策は不可欠と言えます。

以上のように、脆弱性対策はセキュリティの強化だけでなく、データ保護や法的規制への遵守、レピュテーションの保護など、さまざまな側面で重要な役割を果たします。

WAFの必要性

Webアプリケーションは複雑であり、さまざまな脆弱性が存在します。これらの脆弱性を特定し、対処することは容易ではありません。脆弱性は日々変化し、新たな攻撃手法が現れる可能性があります。

これらに対処するには、リアルタイムでのソフトウェアの変更が必要ですが、手動での対応は時間とリソースを要し、現実的ではありません。また、これらの変更がアプリケーションの機能やパフォーマンスに影響を与える可能性もあります。

こういった状況に対応するための現実的な得る対策が、WAF、とりわけCloud-basedなWAFの導入です。 Cloud-basedなWAFには自動的に攻撃検知ルールのアップデートが可能なものが多く、最新の攻撃に追随することが容易になります。

WAFを導入するメリットは、次の通りです。

  1. 脆弱性の悪用防止: ウェブアプリケーションは、さまざまな脆弱性に対して攻撃される可能性があります。WAFは、SQLインジェクション、クロスサイトスクリプティング、パラメーター操作などの一般的な攻撃を検知し、防御することができます。これにより、攻撃者が脆弱性を悪用してウェブアプリケーションに侵入するのを防ぎます。
  2. 被害の軽減: 攻撃者がウェブアプリケーションに侵入した場合、被害を最小限に抑えることが重要です。WAFは攻撃を検知し、阻止することで、攻撃者がシステムに与える被害を軽減します。これにより、機密情報の漏洩やシステムのダウンタイムを防ぐことができます。
  3. 対策の難しさへの対処: ウェブアプリケーションのセキュリティ対策は非常に難しい場合があります。アプリケーションのコードや設定を修正するには時間とリソースが必要であり、新しい脆弱性が発見されるたびに対策を講じる必要があります。WAFは、アプリケーションの変更なしにセキュリティを強化することができるため、セキュリティ対策の負担を軽減します。
  4. 即時対応: 新たな脆弱性が発見された場合、それに対する修正や対策を実装するまでに時間がかかることがあります。WAFは、脆弱性が発見された直後から攻撃を検知し、即座に防御することができます。これにより、セキュリティの脅威に対する即時の対応が可能になります。

セキュリティ対策の負担が大きい場合や即時の対応が求められる場合には、WAFの導入が非常に有効になります。

おわりに

本記事では、Webアプリケーションにおける脆弱性とWAFの必要性についてご説明させていただきました。セキュリティ対策には大変な労力がかかります。しかし、WAFを導入することは、開発者の負荷を軽減しつつ、安全なWebアプリケーションの作成を実現する、一つの解になると思います。

次回は、Webアプリケーションのセキュリティ上のリスクをまとめたガイドラインについて解説します。

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