IoTデバイスとエッジデバイスやゲートウェイとの接続では、Wi-Fiの他にBluetoothという選択肢があります。
Raspberry Pi Pico WにもBluetoothモジュールが搭載されており、活用を考えていたため、人気のあるこちらの本を読んでみました。
著者は、Bluetooth特化の無線化支援企業である ムセンコネクトです。
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総評
Bluetoothについて初めて学ぶには良い本でした。
A5サイズで200ページ弱とコンパクトにまとまっているため、1日で読み終わります。
本書では、Bluetooth Low Energy(BLE)にフォーカスを当てて、その仕様と周辺のルールについて幅広く取り上げられています。
こちらの本の主な対象読者は、Bluetoothを使ってデバイスを無線化したいメーカー技術者であり、デバイスにBluetoothを組み込んで無線で通信したい人がBluetoothの基礎知識を得られるように書かれています。
良かった点
初心者でも分かるように図を交えつつ、丁寧に解説されています。
Bluetoothの歴史からBluetooth ClassicとBluetooth Low Energy(BLE)の互換性のない2種類の方式がある点など、基本的なことから説明がされています。
Bluetoothをデバイスに導入したい技術者の他に、Bluetoothで通信するアプリの開発者であっても、本書を一度読んでおくことでデバッグやエラーハンドリングに役立つでしょう。
ただし、Bluetoothのアプリ開発で使うフレームワークといった具体的な開発の流れは記載がないため、本書の知識をベースに自信が開発したいプラットフォームのフレームワークの使い方は別途学習が必要です。
- 技術だけでなくBluetoothをデバイスに導入する際のルール(技適とBluetooth認証)も網羅しており、Bluetoothを扱う上で知っておくべき基礎知識が得られる。
- 「セキュリティ対策はアプリケーションのレイヤーで行い、BLEが提供する暗号化だけに依存しないことで、BLEに脆弱性があってもデバイスを回収する事態を回避できる」といった実践的なノウハウが書かれている。
- 実モジュールを用いて、通信方式(1M PHY, 2M PHY, LE Coded PHY)ごとの通信距離、消費電力を計測し、それぞれの方式の特徴が分かるようになっている。
残念だった点
全般的には分かりやすくて良い本ですが、コンパクトであることもあり、やや物足りない部分があります。
特に残念だった点は、Bluetoothのセキュリティについて、攻撃者のヒントになることを防ぐために具体的な方法は開示しないとしていたことです。
良かった点に記載した通り、セキュリティ対策をアプリケーションのレイヤーで行うべきとの主張には納得感がありました。しかしながら、アプリ側でどんな対策をするか開示しないことをセキュリティ対策とするのはやや乱暴に思います。
第一に、このような対策方法は内部犯に対して脆弱です。 アプリで決めたルールを知っていれば容易に突破されてしまいます。
第二に、Webのように攻撃手法とその対策がオープンになる方が、開発全体の知識レベルが向上し、Bluetoothエコシステム全体がよりセキュアになると考えます。
本書では、この箇所だけは強い違和感があり、基本的な対策方法は記載して欲しかったと思います。
まとめ
「Bluetooth無線化講座 ―プロが教える基礎・開発ノウハウ・よくあるトラブルと対策」は、Bluetooth初心者が最初の一冊に読むのに相応しい内容でした。
Bluetooth(主にBLE)の基礎技術から技適、Bluetooth認証といったルール面での知識も網羅されています。
A5サイズで200ページ弱のコンパクトな本なので、少しでも興味があれば、手に取ってみていはいかがでしょうか。